ライドンキング【11話 大統領と妖精の鞄】【感想・ネタバレ】【コミックライク】
11話「大統領と妖精の鞄」
前回のあらすじ
新獣王になり加護として亡き妻の思い出を蘇らせてんもらったプルチノフ。ダンジョンを後にして村に帰るとジェラリエの騎士団に囲まれています。その窮地にベルは何かを決意し、帽子を脱いで謎の道具を見せるのでした。
「ライドンキング」【10話 大統領と獣王の冠】【コミックライク】
以下、11話(月刊少年シリウス2019年6月号)のネタバレを含みます。
「ライドンキング」(マガジンポケット)で少しだけ試し読みできます。
ベルの秘密と魔法の道具
ベルが脱いだ帽子の中には精巧な模型が詰め込まれていました。感心するプルチノフにベルは模型じゃないと言い、「魔圧縮(スモールパッケージ)解凍(ブレイク)」と唱えます。
すると模型は大きくなって実物の大きさに復元し、小さな荷馬車に変身します。
「魔圧縮(スモールパッケージ)」というベルのオリジナル魔法で、自在に物を小さくしたり元に戻したりできます。ただし、生物は物凄く小さな虫くらいしか耐えられないとのこと。
魔法について「妖精の鞄」という昔ばなしで例えてくれます。ベルは世間の常識のように言っていましたが、もちろん異世界から来たプルチノフは知りません。
妖精の国のその奥に不思議な鞄がありました。妖精の国ごと丸ごとすっぽり収めることができます。その話を聞いた只人(ヒューム)の盗人が妖精女王の城から鞄を盗み出し、妖精の国ごと鞄に収めます。
しかし、鞄から物を取り出す秘密の呪文を盗人は知らず、呪文を知っている女王は鞄の中。盗人は欲しい物を全て手に入れたものの、鞄の口からじっと眺めるだけで、独りぼっち。
という話。ベルはその呪文を自力で編み出してしまったのです。そのために魔導院(タワー)に追われています。ジェラリエの傍にいたカーヴィンは、魔導院が派遣した従軍魔術士とのこと。
魔導院とは全ての魔法組織を司り、双子の塔に住んでいる魔術師の長老たちの組織。各地の魔術学院に教師を派遣したり、王侯貴族に顧問魔術士や従軍魔術士を派遣したりしています。バリスタやクロスボウも魔導院が作り出した魔術兵器とのこと。
プルチノフは多国籍化した軍需産業と民間軍事会社のようなものと理解します。
ベルのお共にサキが連いて来ているのは友情に厚いからかとプルチノフは推測しますが、サキにも事情がありました。
サキは王国西方の要スクイード辺境伯家の貴族令嬢で、クズな許嫁を押し付けられたりと困っていたところ、ベルが逃げるタイミングが一致したとのこと。ベルの家は代々、サキの家の顧問魔術士で幼馴染だったのです。
帽子の中身はスクイード家の蔵からちょろまかした武具やお宝。お宝だから高く売れると思ってのことだったようですが、あからさまな盗品は買い取ってもらえず、それどころか身代金目当てに狙われたり、居場所を実家に知らされたりしてかえって扱いに困っていたようです。
この窮地を助けてくれるならお宝は全部あげてもいいとベルは言いますが、プルチノフはストップをかけます。
プルチノフにしてみればサキとベルはとっくに同じ小隊の一員と思っており、助け合うのは当然と言います。
いずれ和解する可能性も考え、持ち出した物にはなるべく手をつけない方が賢明、と大人の判断です。ただ、危機を脱するのに使う分はやむを得ないと考えています。
しかしそうなるとプルチノフも魔導院や王国に追われる身になるし、ジェラリエに自分たちを差し出した方が村を守れるのでは、とベルとサキは聞き返します。
そこに「どのみち逆らった下民は許されない」とカーニャの声が割り込みます。「完全密室(ルームオブコナン)」の魔法を破られてベルは動揺していますが、カーニャには只人の魔法などあってないようなものらしいです。
プルチノフもカーニャの言う通りだと言い、当然、自分も我が身可愛さに若者を差し出すなど自らの矜持が許さないと力強く請け負います。
大統領と呼ばれる身、「交渉力には自信ありだ」
ベルは「交渉」ってグーで殴ったり蹴ったりすること?と首を傾げていますが、サキは乗り気だから任せておこうと言います。
プルチノフ流交渉術、開始
カーヴィンはジェラリエにサキのことを報告しています。 ベルの魔法を手中に収めたいので、サキのことを目くらましに使おうと思っています。
ジェラリエに許可をもらって調子に乗ったカーヴィンは、ジェラリエが身に付けている鎧の魔道具について、依存が過ぎると体に毒と忠告しようとしますが、ナイフを顔の傍に突き立てられ釘を刺されます。
ジェラリエは魔術士を信用していないようで、カーヴィンの方も腹にひと癖ありそうです。
するとそこに伝令。閃光魔術師が現れたと報告します。
プルチノフは椅子ひとつを持ち込み、騎士団の前にどっかりと座り込んでいます。
「我々が望むのは交渉だよ騎士の諸君」
スーツを着こなしたプルチノフはさすが大統領の貫禄ですが、相変わらず邪教の神官かと言われています。
「ゴルドー子爵家を父に代わり差配している」とジェラリエ・ゴルドーが進み出て来て交渉開始。ジェラリエ側の要求は「村に逃げ込んだ人馬と貴族の子女、この土地からの退去」です。
話にならんと一蹴するプルチノフ。裏ではマルセロスやサキらが配置についています。
ジェラリエはプルチノフが無断で土地を占拠していると述べ、プルチノフは統治を為さずに法の適用をせよとは虫が良すぎると応酬。この集落は盗賊と魔獣の襲撃で滅び、長い間打ち捨てられていた、子爵家の統治が為されていないことは明白と続けます。
当然ジェラリエは聞く耳を持たず、話は平行線。
プルチノフは「我がプルチノフ村は王国からこの領地を奪い新たな国として独立する」と宣戦布告。「この手の仕事は二度目なのでな」と自信たっぷりです。ジェラリエは鼻で笑い、自らの武力を誇って脅しにかかってきます。
しかし、プルチノフが先制攻撃。ベルのオリジナル魔法で持ち出したバリスタで、ジェラリエ軍のバリスタを破壊します。更に高所から「隼爆矢(ファルコンアロー)」で次々と攻撃。高所を取っているプルチノフ側の一方的な攻撃です。
カーヴィンは目標を変更、プルチノフを仕留めにかかり、火炎魔法を向けます。本来魔術士は攻撃魔法を禁じられているそうですが、契約者の安全を守るための特例時効と言っています。ケンタウロスが気付いて狙撃しますが魔法の盾で防御されます。
勝利を確信するカーヴインですが、魔法の防御を貫いたモノが鎧も貫いて体に着弾。プルチノフが懐から抜いた拳銃の銃弾でした。防御が崩れた隙を突いて、マルセロスがカーヴィンの脳天をブチ抜きます。
「さて交渉の続きを望むかね? ご覧の通りこの期に及んで交渉など我々には必要のないものだが」
「君たちには今 何より必要なのではないかね?」
立ち上がったプルチノフがジェラリエ軍を見下ろしての堂々の宣言です。
感想
ベルのオリジナル魔法の秘密と、サキの家系の秘密が明かされました。
二人は完全に騎士団に包囲された今、危機を脱するのは困難と諦めているフシがありますが、既に仲間と思っているプルチノフは見捨てません。もっとも、仲間でなくとも困っている者がいたら手を差し伸べたでしょうけど。
いつもは肉弾戦で圧倒的強さを見せつけてくれるプルチノフですが、もうひとつの武器、「交渉力」でジェラリエを圧倒します。大群を前にしても怯まない胆力、周到な用意、論戦。拳銃で魔術士を倒すとは想定外でした。
不利な立場から一転、優位に立ったプルチノフ。戦闘になっても可、交渉になっても可、プルチノフの筋書き通りです。
次回、ジェラリエがどうでるのか。ただでは屈服しないでしょうし、もうひと波乱ありでそうですね。
「ライドンキング」【12話 大統領と人馬の誇り】【コミックライク】
↓良かったら応援して下さい!
ライドンキング2巻【電子書籍】[ 馬場康誌 ][楽天kobo電子書籍]